コラム
ホーム≫
【 Column:コラム ① 】

本当に、JAは“総合事業”を続けていくのですか?
〜この先の変化と革新を、本音で議論しませんか〜

『Harvard Business Review』(米国版:創刊1922年)の2015年10月号に驚愕の論文が載り、関係者を慌てさせました。"The Future and How to Survive It"という論文は、「今後、世界中の既存の銀行で、新たなイノベーションを起こせない場合に、その92%が10年以内に消滅すると予想」していて、とりわけ、「銀行窓口や受付業務、データ入力などの仕事は、テクノロジーの発達ならびに人工知能(AI)の発展によりどんどん代替が進んでいく」としています。
世界で一、二を競う大コンサルタント会社のマッキンゼーの研究者の論稿だから、ビジネス界への警鐘的な論文になるのは当然ですが、それにしても、金融界にはショッキングな論文でした。
ところで、わが国にフィンテック「FinTech」という造語が紹介されたのは1997年頃のこと。のちに平成不況とか、空白の20年とかいわれる時代がスタートした頃で、大手の金融機関がバタバタと連鎖的に破綻した年でもあります。97年11月に北海道拓殖銀行、翌週には山一證券が自主廃業、翌年には、日本長期信用銀行や日本債権信用銀行の政府系銀行が破綻。バブル崩壊、株価急落、先行き不安が大きく膨らんだ時期です。
当時、よく意味を解せず、新造語に敏感に反応することもなかった「Finance」と「Technology」の頭の部分を組み合わせた「フィンテック」が、本格的にビジネス界に登場するのは5年前から。以後、金融関係者が頻繁に使うようになりました。端的に言えば、ITの進化は金融機関の土台を突き崩す、というものです。
 事実、金融機関の業務領域を、ITの急激な進化が揺るがすことになり、キャッシュレス化の進展が金融機関の店舗や窓口、行員や職員の仕事の必要性にまで課題を突きつけたのです。 インターネットバンキングが始まって15年ほど経過しますが、その後のIT技術とその社会浸透の進化のスピード、金融・決済など新システムの登場と利用者の消費・決済行動の変化は実に劇的です。一方で、金融業態の対応や進化のスピードはスローなまま。それが当初の"Harvard Business Review"の記事につながるのです。
こんな“フィンテック”をめぐる金融界の話を書いていますが、友人の雑誌記者によれば、世の中の変化のスピードと最近の金融業界の対応のスピードに、雑誌の企画が追いつけない状況だと言います。なぜなら、昨今の業界ニュースは、業界全体の動きを読むのではなく、個別の金融機関の動きや変化に軸足を置いて情報収集していないと、変化の全体像が見えないというのです。たしかに、この数年の変化の大きさは、業界全体での動きではなく、個別の変化が線から面へと変化しているということのようです。
さらに、この2年から3年は、さらに予期しない変化が起きたり、まったく予想だにしなかった金融サービスなどが登場する、フィンテックが本格化し、次の時代を先取りする現実が生じそうだといわれています。

それで、JAの金融事業に目を向けると、多くのJAが、今後とも“総合事業”でやっていく、としているといわれています。率直に言って、本当に大丈夫ですか?とJAの経営者にお聞きしたいです。これまでの延長線上で金融事業を続けるという考えであるなら、再考すべきです。
たしかに、JAの強みは複数の事業を兼営し、組合員や地域の利用者にとって利便性の高い地域金融機関としての歴史を歩んできました。しかし、どうでしょうか? 冒頭の論文のような“新たなイノベーションを起こせない場合に、その92%が10年以内に消滅する”という意味を、冷静に客観的に、現在のJAの事業活動や経営状況を検討してみる必要があるのではないか。私の大きな心配はここにあります。
いままで通りの金融業務を続けていて、JAの事業の要(かなめ)として生き残れるだろうか、という疑問です。仮に、県下一つのJAになる合併があったとしても、です。よほどのイノベーション(革新)をめざした行動をいまから起こさない限り、不安は解消されないでしょう。
一緒に考えたいというJAの経営者がいらしたら、議論をしませんか? じっくり検討しませんか? 支店や支所という金融店舗の姿は間違いなく変わるでしょうし、通帳がなくなる日も近いでしょう。AI(人工知能)を活かした窓口業務の無人化、店舗以外での顧客接点、訪問と渉外のあり方など、いまから準備し、対応方向や方法について、JAのもつ強みを発揮しつつも、事業革新を図り、組合員や顧客視点で、商品や決済システムなどを考えていくことの必要性を痛感しています。
すでに、三菱UFJ銀行は、2023年度までに、全国の店舗のうち、窓口のある従来型の店舗を半分に減らし、省人化した新しい小型店舗などに切り替える計画を発表。行員削減、店舗削減など、想像を超える大改革に取り組む。

(伊藤喜代次)

コンサル&研修 JAのコンサル・
教育研修
出前研修 無料電話相談 コラム プロフィール リンクサイト